古河はなももマラソン

同日に近所で横浜マラソンが開催されるが、古河はなももマラソンが好きである。平坦だし、何より2年前にベストを出して相性がいいのだ。2年前は無謀にもサブスリーペースで突っ込んで撃沈したものの、それでも前半の貯金が効いて3時間8分47秒だった。今年は、そのタイムを越えることを目標にした。

 

今回はできるだけ突っ込まないように、前半は4'30"ペースで抑え、30キロ以降4'25"まで上げるという計画。

 

JR古河駅茨城県にある宇都宮線の駅で、横浜市からはかなり遠く感じるが、横浜から上野東京ラインを使って乗り換えなしで行ける。グリーン車を使って一気に移動する。車内で朝食を摂る。前日に仕入れたパンと、自宅で淹れてきたコーヒー。豆はスターバックスのパイクプレイス。どんなに美味しくても、冷たいパンを可能な限り腹に詰め込む作業は辛い。熱いコーヒーがあるだけでずっと華やいだ朝食になった。もちろん、利尿効果という点ではコーヒーは諸刃の剣である。飲みすぎない程度に抑える。

 

古河に着き、シャトルバスのバス停まで1キロ以上歩く。駅のそばにはバスを停められないのかもしれないが、それにしても遠い。バス乗り場を複数設け、スタッフが的確に案内をする。同時に複数のバスへの乗車ができるので、スムーズに乗り込むことができた。

 

コインロッカーに荷物を預ける際に、大きな失敗をした。ロッカーを確保するためにリュックを放り込んだ状態でトイレや選手受付に行った。そのとき、リュックの紐が垂れ下がっていた。ロッカーに戻ってきたとき、ちょうど下の段を女性が使っていたのだけど、この女性が鍵をかけるときに、リュックの紐を巻き込んでしまった。引っ張ってみてもどうにも取れない。自慢じゃないけれど、平均的な女子ランナーと僕のフルマラソンのタイムはそれなりに大きな差がある。もし彼女がゆっくりのランナーだとすると、6時間以上かかるかもしれない。

 

古河駅にはレースの2時間20分前と早く着いたのだがいろんなことで遅くなってしまった。しかし、古河はなももマラソンは直前に整列しても大混雑ということがなく好感が持てる。Cブロックに並ぶ。ゲストランナーは松野明美さん。放送によると、キロ4分で走るとのこと。現役引退してずいぶん経つと思うけど、そんなスピードで走ったら優勝しちゃいそうだ。

 

スタートするとすぐ、ゼッケンが落ちている。タグがあれば計測はできるけど、ゼッケンなしで走っていいのだろうか。最初の1キロが4'40"。渋滞に巻き込まれることもなく、ほぼ予定通りのスピード。次が4'29"、そして、4'20"。3キロで早くも予定以上のペースになってしまった。

 

少しペースを落とす。いつもならば前にいるランナーについていこうとペースを上げてしまうところだが、冷静に考えた。走る僕と、それをガイドする僕。ガイドの僕は、ペースが速くなってしまったら抑える役目だ。それで4'30"ペースに近づけることができた。6km地点で再びペースアップしたときも少しずつペースを落とすことができた。

 

5kmの折り返しで松野明美さんを発見。1分程度の差だったろうか。少なくともキロ4分のような超高速で走ってはいないようだった。男性ばかりの集団で、女性としても小柄な松野さんは、ひときわ小さく見えた。

 

「メガネさん頑張って〜」という応援の声が聞こえる。なんのことから分からず走っていたら、突然目の前にメガネが落ちてきた。本当に、あと数センチのところで踏むところだった。あれは何だったのだろう。

 

10kmを過ぎると、またしてもペースが上がってしまう。しかしこのときは16kmまでペースを落とせていない。落とすという意識がなくなっていたようだ。しかし、16kmから31kmまではほぼ4'30"ペース。

 

この辺りでは、自己ベストの更新を確信していた。3時間7分台を出すにはどうしたらいいか、思案していた。このまま自己ベストを出したら、ベストもセカンドベストも古河はなももになっちゃうなあ、と思った。よほど相性がいいに違いない。

 

中間地点の折り返しでは、松野明美さんはトイレをノックしていたが、すぐに使えないことが分かると諦めて走り出した。そのせいで少しずつ差は詰まっていた。25kmの折り返しでは38秒差。声をかけるとニコニコと手を振ってくれた。30kmで26秒差まで詰めた。追いつけるかもしれない、と思った。が、これ以上差が縮まることはなかった。

 

気持ち的には余裕があるペースだと思っていたが、足はついてこれなかった。29kmで軽い痙攣が始まる。芍薬甘草湯を飲むが、効果なく、31kmを過ぎると痙攣の範囲が広がってくる。足指から始まり、ふくらはぎが一定の間隔でぴくぴくと震える。ペースが4分台の後半落ちる。

 

無理してペースを維持するよりも、しばらくゆっくり走って痛みが引くのを待つ。35kmを過ぎるとペースは5分台。38kmを過ぎると、少し体が動くようになった。後ろから来た女子ランナーにつこうとする。ペースを上げた瞬間、右のハムストリングが痙攣。ふくらはぎであれば騙し騙し走れるが、ハムストリングをやると走れない。立ち止まり、ストレッチをする。それで1キロのタイムが6分近くになった。その後もスピードは上がらず5分台の後半。

 

40キロ地点を右折し、2年前に立ち止まった場所を通過する。はっきり覚えている場所だ。今年は、それよりもさらに手前でストップしてしまった。

 

トラックに入り、抜かれたくないという気持ちが高まってくる。最終コーナーで一人を抜き返す。そのままゴール、というところで、今度は左足のハムストリングが痙攣。たまらず立ち止まる。残りは5mくらい。振り返ると、一瞬で10人くらいに抜かれてしまった。まさか、42.19km走ったところで動けなくなるとは思わなかった。とは言え、数歩なので、そのまま歩いてゴールする。41回目のフルマラソン完走だけど、歩いてゴール地点を通過するのは初めてだ。

 

完走メダルをかけてもらい、完走賞受け取りのブースに移動する途中、メダルが落ちているのを見つけた。何でそんなものを落とすのかと思っていたら、隣を歩いていた人もメダルを落とした。どうやら、紐に緩く引っかかっているだけなので、ちょっとした衝撃で外れてしまう作りのようだ。

 

ゼッケン、メガネ、メダルと、いろんな落し物を見てきたが、最も落ちたのは自分のタイムだった。軽く自己ベスト、と思っていたら大間違いで、結局、怪我の中を押して出た別海町パイロットマラソンを除けばシーズンワースト記録になってしまった。

 

ゴール後、ロッカーに戻ったら、下の女性はすでに戻ってきた後らしく、リュックの紐は無事に解放されていた。

 

4'40" 4'29" 4'20" 4'24" 4'29" (5km 22'21")

4'21" 8'49" 4'30" 4'33" (10km 44'30" 22'09")

8'45" 4'22" 4'23" 4'21" (15km 1:06'21" 21'51")

4'22" 4'30" 4'26" 4'26" 4'26" (20km 1:28'31" 22'10")

4'27" 9'04" 4'21" 4'26" (25km 1:50'50" 22'19")

4'30" 9'01" 4'29" 4'23" (30km 2:13'14" 22'24")

4'31" 14'12" 4'53" (35km 2:36'50" 23'36")

5'02" 5'12" 5'08" 5'59" 5'31" (40km 3:03'43" 26'53")

5'42" 6'44" (42.195km 3:16'09" 12'26")