別府大分毎日マラソン

陸連登録を忘れたので、ほとんど最後方からのスタート。大きな大会では、陸連未登録者の扱いは低い。
別府大分マラソンは、スタート地点に立つためにもグロスで3:30以内の記録がないといけない。だから渋滞を引き起こすような遅いランナーはいないはずである。それでも一番後ろからスタートすると、なかなか前に進まない。スタートから30秒ほどして、ようやくスムーズに(ジョグペースで)進むようになると、前方が一斉にストップ。まるで、ちょっと進んでは止まることを繰り返す高速道路を走る車のように。
 
スタートから1分後、ようやくスタートラインを踏む。ほとんどの大会は、大きなアーチがあり、ネットタイムを計るためにスタート地点にも計測用のセンサーが置かれ、「ここがスタート地点」というのが祝祭的に分かるようなっている。でも、別府大分マラソンのスタートラインは、単なる整列の場所に過ぎない。だから、白いビニールの線が1本だけ引かれている。下を向いて走っていない限りは気づかないほどの地味さである。
 
ここでストップウォッチのボタンを押す。ここから、僕のフルマラソンは始まる。ロスタイムは無視して、自分の時計でネットタイムを計測する。スタートラインを越えても、渋滞は解消されない。最初の1キロはのろのろと進む。周囲のランナーとの実力差が少ないせいか、1キロを過ぎても集団の人口密度は高いままである。それでも、目標ペースの4’30”に近づいていく。
 
今回の目標は、前半を4’30”、後半は少し上げて4’25”のペースで走ることだ。前半が速すぎると、どうしても後半が長く感じてしまう。だからなるべく前半は楽をしておいて、後半の20kmを気持ち良く走りたい。
 
最初の5kmが22’37”、次の5kmが22’21”でほぼ目標通りのペースでスタートを切ることができた。きつさもなく、10kmの折り返しに思ったよりも早く到達した。
 
折り返すと、僕と同じくらいのゼッケン番号を付けたランナーが何人もいる。同じ位置からスタートしているはずなので、ペースも同じくらいのはずだ。だからペースメーカーとして付いて行くことにした。きついということはないのだが、ペースが若干上がって4’25"前後になってしまった。
 
別府側から大分に向かう道は気持ちが良い。広々と開けた道路を淡々と進んでいく。3車線の車道を目一杯使い、カーブに合わせて右へ左へ車線変更を行う。ウインカーは出さない。国道10号線はカーブの外側が高くなっているので、最短距離を走ることがアップダウンを減らすことにもつながる。
 
ここまでは疲れもなく不安もない。左側にはときおり海が見える。前のランナーの背中を見てペースを合わせていく。でもだいたいは我慢ができなくなって前に出る。給水で目標のランナーを見失うこともある。
 
景色の気持ちよさの一方で、胃の方は朝食を食べ過ぎたのか気持ちが悪い。アミノバイタルゼリーは2本持っていたが、持って走ると重いので13kmと23kmで早めに飲んだ。やはり2本持っていたスポーツ羊羹は食べたいという気持ちが起きない。食欲が起きないどころか、気持ち悪いので、ちょっと吐いたら走りやすくなるのでは、という気持ちにまでなった。
 
朝食はホテルでの和朝食を選んだ。ビュッフェ形式では脂っこい食事になりそうだったので、和食のほうがしっかりと炭水化物を補給できると考えた。9時までにご飯を3杯食べ、会場に移動してから大福(福岡で買った梅ヶ枝餅だ)を3個頬張った。
 
食事に関して言えば、最後までまったく空腹を感じることはなかった。途中、気持ち悪くもなったが、終盤は吐き気が収まっていた。
 
大分の市街地に入ると、だんだんと元気がなくなっていくのがわかる。もう頑張らなくてもいいんじゃないかという気持ちが襲ってくる。大分だって美しい並木道なのだけど、木陰ができる分薄暗い。応援もないし、大型の店舗やファミレスもない。海も見えない。別府側の国道10号線があまりに開放的でリゾート的な作りなので、落差が大きいのだ。なんだか寒々しくもある。橋を渡るたびに小さなアップダウンがあり、ボディブローのように少しずつダメージが蓄積していく。4分半のペースを維持したのは、26kmまでだった。その後は結局最後までペースが上がることはなかった。
 
花火が上がり、トップのランナーのゴールを告げる。僕はまだ28km地点だ。先は長い。変化のないまっすぐな道に飽きてくる。ゴール地点を遠ざかっていくのが悲しい。今年に入ってから30kmまでしか走ったことがなく、スタミナが足りないことが露呈する。意識が朦朧となり、残りの距離から予想タイムを計算することができない。
 
前に進む気持ちが失われる。体がエンジンが切れて惰性で前に進んでいく車になったようだ。キロ5分まで落ちた。35km地点の折り返しを過ぎてもペースは上がらないが、幸いなことにそれ以上落ちることもなかった。36kmから僅かだけどスピードが回復する。意識も少しずつクリアになり、予想ゴールタイムを計算する。3:13の前半だろうか。もうちょっと頑張れば12分台も狙える。
 
残り1キロを切って、ペースを上げたいが全く上げることができない。競技場に入ってなんとか頑張ろうとすると足が攣る。がくっと膝が落ちる。でも立ち止まらなければならないほどではない。かろうじて走り続けることができた。地面を蹴ることはできないが、下を向いて歯を食いしばって走る。最後の直線で知り合いに抜かれた(本来、後ろにいるはずのないランナーだ)。声をかけると手を振ってくれた。もしネットタイムがあれば勝ったはずだ。
 
ゴールラインを越える。感動的なゴールというよりも、事務的にラインを跨いだという方が正確かもしれない。ゴールも、3時間超えとなるとゴールテープもなく、どこがゴールかもよくわからない。スタート地点との違いは、センサーがあること、トラックなので大体のゴール位置を想像できることくらいだ。
 
とにかくゴールラインを越え、完走者タオルをもらう。肩からかけてもらうのではなく、手渡しされるだけだ。あくまでも事務的で、何の感慨もない。
 
記録はグロスで3:13’56”。ネットでは3:12’55”。自分の中では3番目の記録。今シーズンとしてはちょっとずつ記録は伸びているのだが、満足できる結果が出ない。特に、後半のタイムが前半よりも5分も落ちていた。今シーズンは別海町パイロットマラソンと湘南国際マラソンがネガティブスプリット、つくばマラソンも前後半差が30秒以内と、失速しないことを心がけていただけに悔しい。
 
レースを終えてホテルに戻る。レースがどんなに苦しくても、納得のいくタイムで走れなくても、じわじわと楽しかった温かい思い出が体の中を支配していく。アルコールの陶酔感がやや遅れて到達するように。また来年戻ってきたいと思う。
 
4’51” 4’13” 4’36” 8’56” (5km 22’37”)
4’25” 4’22” 4’28” 4’27” 4’40” (10km 44’58” 22’21")
4’20” 8’47” 4’29” 4’22” (15km 1:06’56” 21’58”)
4’23” 4’33” 4’11” 4’23” 4’38” (20km 1:29’05” 22’09”)
4’25” 4’24” 4’31” 4’29” 4’12” (25km 1:51’06” 22’01”)
4’29” 4’33” 4’35” 4’40” 4’33” (30km 2:13’57” 22’51”)
4’37” 4’44” 4’37” 5’01” 4’58” (35km 2:37’55” 23’58")
4’58” 4’46” 4’47” 4’47” 5’01” (40km 3:02’13” 24’18”)
4’52” 4’57” 0’54” (3:12’56” 10’43”)
 
First Half 1:33’55" 
Last Half 1:39’03"