追加金融緩和

6月の日銀金融政策会合では、追加緩和が行われると予想する。

 

4月の日銀金融政策会合では追加緩和は行われなかった。これは市場にはネガティブサプライズとして捉えられ、日経新聞でさえ「まさかの緩和見送り」と書くほどの意外性を持って迎えられたようだ。見送りの理由も後付けで様々に推測されている。

 

しかし、黒田総裁からすれば4月に追加緩和するつもりは元々なかったに違いない。黒田さんは常々「必要があれば」躊躇しないと言っている。今回は最初から緩和の必要がなかったのだ。もう一つ、サプライズを好む黒田総裁が市場の空気を読まないことは、以前から分かっていたことだ。

 

では、黒田さんが考える追加緩和の必要性とは何だろうか。一つは政府の要請である。黒田さんも政府から指名されている以上政府の要請には逆らえない。もう一つは効果が得られるかどうかである。バズーカと言われるように、金融緩和は何度も撃てるものではない。効果がないときに大事な弾を撃ってしまってはもったいないのだ。

 

そのように考えれば、6月には追加緩和が行われるだろう。安倍総理の最大の目的は、長期政権に向けたリスクの排除である。そのためには、勝てるときに選挙を行って勝っておくことが重要である。だから7月には衆参同時選挙に踏み切るだろう。

 

自民党が選挙で勝つことをより確実にするために、立て続けに景気対策が行われるはずだ。為替介入、財政出動、金融緩和、あらゆる対策で株価の向上に努めるはずだ。消費増税延期も発表されるかもしれない。その中でも、政府としてはコストゼロで実施できる金融緩和は特に重要だ。そして政府の要請による金融緩和は黒田さんの必要性の一つでもある。

 

もう一つの効果性であるが、日銀が単独で行う金融緩和では、もはや大きな効果は得られない。これは1月の緩和のときに露呈した。それでも政府と協調して一連の政策として行う金融緩和であれば、一定の効果が得られるだろう。従って、6月に金融緩和を行うはずだ。

 

では、どのような緩和策が取られるだろうか。

 

黒田総裁は金融緩和策について、量的、質的、金利の3つの次元と言っている。黒田さんの任期(2018年3月)中に効果が得られるようにすることを考えると、追加緩和を行えるのは2016年度内に限られるだろう。2017年度に入ってしまうと、CPIの上昇に寄与するのは2018年度に入ってしまい、黒田さんの成果にならなくなってしまうからだ。

 

と考えれば、6月は予想を超える大規模な金融緩和になるのではないだろうか。よりセンセーショナルにするには、3つの次元全部での緩和が効果的だろう。量の面では、すでに国債市場は干上がっており、これ以上の緩和は難しいとされているので、年間の増加額で100兆円くらいがせいぜいだろう。質の面ではETFの購入額だが、株価対策が政府支持率の向上に寄与するので、増額されると予想する。ETF購入額は2014年10月に倍増して3兆円になっているので、2013年比で3倍の、4.5兆円程度だろうか。

 

しかし緩和策の最大の目玉は金利と考える。現在マイナス0.1%の日銀当座預金金利はECBのマイナス0.4%を下回り、マイナス0.5%程度になるのではないだろうか。これでサプライズを狙うはずだ。そして、必要があればさらなる緩和を行うことを明言する。

 

この緩和策と、政府による為替介入をほぼ同時に行うことで、円安誘導、株価上昇を演出するのだ。効果が出れば政府は衆議院を解散するし、効果が期待外れに終われば解散はしない。だから今の段階では「解散は考えていない」という回答に終始する。

 

こんなシナリオが頭をよぎった。